けがや病気に失業、別居、離婚など環境の変化によって住宅ローンが払えない!という事態は誰にでも起こり得ることです。
せっかく手に入れた大事なマイホーム。思い出もたくさんありますし、最後まで守りたいですよね。
ですが、住宅ローンが払えない状況が続いた場合、最終的には「任意売却」か「競売」の、2つの道しかないことをご存知でしたか?
一度は聞いたことがあるかもしれませんが、任意売却と競売とでは意味合いもそしてその後の状況も全く違うといっても過言ではありません。
のちほど詳しくご説明しますが、競売になった場合生活再建はおろか、明日の寝食もままならないという事態になりかねないのです。
また任意売却の専門家は口をそろえて
「任意売却は早ければ早いほど、いい結果につながる」
というように、時間との勝負でもあります。
迷っている間にも、時は刻一刻と進んでいくもの。
ならばできるだけ債務を減らし心機一転、未来を見ることはあなたにも、そして愛する家族のためにも大事な決断です。
ここでは
- そもそも任意売却とは?
- なぜ任意売却を勧めるのか。競売との違い
- 任意売却を決めたときの手続き方法、費用とその後の生活
などを中心にお伝えしていきます。
記事の目次
任意売却とは?
任意売却とは、住宅ローンが払えなくなった人(債務者)と、住宅ローンを貸している金融機関(債権者)とが合意のうえで不動産を適正な価格で売却し、返済に充てる仕組みのことです。
一方競売は、金融機関が抵当権をもとに差押え、競売にかけ売却し、強制的に貸し出しているお金を回収する方法です。
任意売却?競売?知っておきたい二つの違い
なぜ任意売却を、と強く勧めるかというと競売になった場合のデメリットがあまりにも大きすぎるからです。
競売のデメリット
近所・職場に知られてしまう競売になると裁判所のHPや情報誌に掲載されるので、周囲に気づかれることがあります。
また、現地調査もあるため近所で噂になった事例も多くあります。
売却されても多くの債務が残る可能性がある相場の2~4割減の価格で売られてしまうので、思ったよりも債務が減らない場合がほとんどです。
しかも残った債務は一括返金を迫られるため、家を失った上に厳しい状況が続くことになります。
引っ越し費用は自分で用意売却して出た利益はすべて債権者への返済にあてられるので、立ち退きに必要な引っ越し費用を出してもらうことはできません。
だからと言って住み続けていると、不法占拠とみなされ裁判所より強制執行の対象になります。
債権者との交渉は困難いろいろ交渉や相談したいことがあったとしても、すべて個人で行わなければならず、しかも応じてもらえることはほとんどありません。
給料の差し押さえも実際に行われますので、生活に支障をきたすのは必然です。
一方、任意売却はどうでしょうか。
任意売却の場合
職場・近所に知られなくて済む競売のように裁判所HPや情報誌などに公表されることがないので、周りからは普通の売買のようにしか見えません。
市場価格に近い値段で売却できる競売のように安値で売られることはなく、売り手と債権者、買い手の話し合いで決められるため大幅なローン減が期待できます。
引っ越し費用や短期間の生活費が捻出できる競売での利益は一切手元に残すことができませんが、任意売却では債務者と交渉次第で引っ越しの資金や、少しの間の生活費を捻出することが可能です。
残った債務の分割返済が可能債権者と合意の上、生活状況や収入状況を考慮した分割での支払いが認められるので、生活再建を行いながら現実的な返済が可能になります。
場合によっては住み続けることもできます競売は強制退去が行われますが、任意売却で親族や理解のある不動産投資家に家を買い取ってもらえた場合、家賃を払うような形で債務を返済しながら、そのまま住み続けることも可能になります。
任意売却を考える前にできること
あなたは今、どれくらいの期間住宅ローンを滞納していますか?
その期間によって適切な対応が変わってきますので、詳しく見てみましょう。
まだ滞納していないが、とても厳しい状況だ
ローンを滞納し金融機関から連絡があった際、最初に言われることが
「なぜ、滞納する前にご連絡をくださらなかったのですか」
ということです。
そう。支払いが厳しくなりそうだ、と予測がついた時点で金融機関に相談すれば、ローンの見直しや期間の猶予や減額など、対策を提案してくれることがあります。
もちろん100%ではありませんが
「払いたいがどうしても困難だ」
という支払いに前向きな姿勢・意思は伝わりますし、事情に耳を傾けてくれる猶予があるのです。
滞納前のあなたでしたら、今すぐ金融機関に相談することをお勧めします。
そのとき、絶対に忘れないでほしいことが1点だけあります。
それは「プライドや嘘は捨ててください」ということ。
これは今後の任意売却でもいえることですが「あなたの今の本当の姿」を相手に見せないことには正しい解決策は見つかりません。
1~3か月滞納している
督促が始まっているこの時期でも、まだ計画の見直しや減額などに応じてくれることもあります。
とにかく金融機関に連絡と相談をしてください。
一番いけないことは「督促を無視する」こと。
何度も電話があったり手紙が来たり…。
話すのが怖くなる気持ちもわかりますが、連絡がつかないとなると金融機関に
「この人は支払いもしない、改善する気持ちもない」
と、みなされても仕方がありません。
日常生活においても、連絡が取れない相手との間に信頼関係などありえませんよね。
「迷惑をかけているのはこちらだ」という気持ちを念頭に、まずは丁寧な謝罪と誠意ある姿勢で相談をしてください。
なお、気を付けていただきたいのが、取引金融機関が
- 信用金庫
- 都市銀行
の場合は要注意です。
3か月滞納で大半が競売の手続きに入ってしまうからです。
悩んでいる間に競売の手続きが開始されてしまった、という事態を避けるためには任意売却へ舵を取るのが得策です。
どの先ほども言いましたが
「任意売却は早ければ早い方ほど、いい結果につながる」
これを肝に銘じてくださいね。
4~6か月滞納している
結論から言います。
いますぐ任意売却へ動いてください。
もはや競売にかけられるのは時間の問題であり、最終通告の日時までに滞納金と延滞金を支払えないでいると、一括返済を迫られることになります。
こうなってくると可能性はゼロではありませんが、任意売却は非常に厳しくなってくるのです。
1分1秒もムダにはできない状況だと思ってください。速やかに専門家へ連絡することが、あなたに唯一できることです。
任意売却に必要な手続きと流れ
競売は何もしなくても勝手に売られてしまいますが、任意売却はあなたが自ら行動する必要があります。
ここでは任意売却専門の業者に依頼した場合の、一般的な流れを説明します。
1.任意売却の専門業者に相談
任意売却は普通の不動産屋さんに行っても相談には乗ってもらえません(そのような部署があるところは別ですが)。
専門業者に相談しましょう。
このとき必要になるのが、
- 物件の種類(マンション・戸建てなど)、所在地
- 借入先の金融機関名、ローン残高、滞納期間と滞納金額
- 現在の収入状況や生活状況。
です。
先ほどもお伝えしたように「プライドと噓」は捨ててください。
正確な情報があるからこそ、的確なアドバイスと買い手の選定ができるのです。
2.物件の査定・契約
実際の物件の確認や、近隣の市場価格などをもとに売却金額を決め、今後のスケジュールを提案してくれます。
納得できたら、業者と専任媒介契約というものを結びます。
この契約によって業者があなたの代わりとなり、債権者と任意売却の交渉を始めてくれます。
その際に必要な手続きは、すべて業者がやってくれるのであなたは自身の生活の立て直しに集中できます。
3.債権者との交渉
業者が販売価格、販売期間、諸費用の負担などの交渉に入ります。
4.発売開始、購入者の選定
債権者に任意売却の同意を得た時点で不動産情報誌やサイト、不動産業者間のデータベースに情報をアップしていきます。
これは通常の不動産売買と同じ方法ですので、周りからは「普通の売家」としか映りません。
購入希望者が現れたら適切な購入者かを審査し、最終決定します。
5.債権者に同意を得る
債権者に報告をし、利益をどのように分配するかを取り決めていきます。
このときに税金などの滞納金、残りの債務の返済方法、引っ越し費用や生活費の確保など交渉し、任意売却の最終同意を得ます。
6.売買契約締結
買い手と売買契約を締結します。あなたは引っ越しの準備に取り掛かることになります。
業者によっては引っ越し先を探す手伝いをしてくれるところもあります。
任意売却に必要な費用は?どれくらいの期間がかかる?
任意売却を依頼した場合、最初に費用を捻出する必要はありません。
そんな費用があるならローンの返済に回したい、生活の足しにしたいと考える依頼者が多いからです。
では完全無料かというと、もちろんそうはいきません。
任意売却を引き受けてくれた費用は「成功報酬(仲介手数料)」という形で、物件の成約代金から差し引かれるのです。
この仕組みのおかげで、あなたはリスクを最小限にしたまま家を売ることができるんですね。
費用も法律で厳密に決まっていて、
成功報酬=成約金の3% + 6万円 + 消費税
となります。
次に売却までの期間ですが、物件の現況や立地などの要素にも大きく左右されるため、一概には言えませんが目安として
- 滞納前 → 6か月~1年半
- 滞納後 → 3か月~6か月
です。
ごらんのとおり、滞納が始まってしまうと売買が成約するまでの時間が限られてしまう、ということです。
任意売却が成功するための最大のポイントは
「一刻も早く決断し行動すること」
だと肝に銘じてください。
まとめ
まじめで責任感の強い人ほど、こうなったのは自分のせいだ、自分で何とかしなければ、と抱え込んでしまうものですが、任意売却の専門家の多くが無料相談を受け付けています。
プロの意見を聞くことで視野が広がり、新しい発見があるはずです。ぜひ利用してみてください。
ただし、最近「100%、絶対売却します」や「引っ越し費用100万円出します」など甘い言葉をささやく業者が見受けられ、問題となっています。
騙されないためにも1社だけじゃなく、数社を見比べる必要があります。
任意売却は今の状況から抜け出し、もう一度前へ進むための方法です。
後悔のないよう、今できることから始めてみてはいかがでしょうか。