事業用定期借地権は、地主にとってメリットがある契約に思えますが、通常の定期借地とはどのような点が異なるのでしょうか?
事業用定期借地権の内容を知ることによってメリットが大きい方を選ぶ事が可能になるのです。
このページでは、事業用定期借地権と一般定期借地の違い、メリットとデメリット、具体的な事業用定期借地権相場の計算方法についてもご紹介しましょう。
記事の目次
定期借地と事業用定期借地権
土地を誰かに貸したいと思うけど、将来的に返して欲しいなら定期借地や事業用定期借地権にした方が良いでしょう。
こちらでは、定期借地や事業用定期借地権の解説を始め、どのように違うのかという事をご紹介します。
定期借地とは?
一般的な土地を貸す借地契約では、期限を決めることができず、無期限で土地を貸すという条件になっています。
しかし、将来的にその土地で何かをしたいとか、理由があって貸している土地を返却して欲しい場合、借地借家法で定期借地というものがあります。
この定期借地にしておくと、契約期間が過ぎれば土地を無条件で返してもらえます。
最初の契約の時点から期限を決めて貸すのでトラブルになることもありません。
定期借地には、一般定期借地権の他、建物譲渡特約付借地権、事業用定期借地権などがあります。
事業用定期借地権について
事業用定期借地権は、定期借地の一種で、居住用ではなく事業用として主に会社などに土地を貸す定期借地です。
期間は10年から50年程までですが、10年とすることが多く、更新はありません。
借地人が建物の買取りを地主に請求することはできないため、利用価値の高い道沿いの土地などで事業用定期借地権が設定されるケースが多いです。
子供さんが将来、所有している土地に家を建てる計画があるなら事業用定期借地権にした方が良いでしょう。
事業用定期借地権と一般定期借地の違い
事業用定期借地権と定期借地との大きな違いは、存続期間です。
一般定期借地の場合、存続期間が50年程になります。
一般定期借地は、その土地を使う予定が無い場合、利用すると良いですが、存続期間中に土地を売却したくなってもできません。
事業用定期借地権なら、存続期間が10年と短いので、その後に土地を売ったり、家を建てたりすることもできます。
建物は、一般定期借地の場合、更地にして返却する事になっていますが、事業用定期借地権の場合、建物買取り請求を借地人がする事はできませんが、更地にする必要はありません。
ただし、事業用定期借地権は、事業用に限定されるため、便利が良い場所以外は利用者が限られます。
事業用定期借地権のメリットとデメリット
事業用定期借地権は、土地を貸すうえでどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
具体的なメリットとデメリットの内容をご紹介します。
事業用定期借地権のメリット
事業用定期借地権には次のようなメリットがあります。
- 短期間の土地貸し出しができる
- 期間が終了すれば理由なく返却してもらえる
- 事業用なので高い地代をもらえる
- 居住トラブル等が無い
事業用定期借地権の一番のポイントは存続期間が短い事です。
通常の定期借地では50年ですが、事業用定期借地権なら10年以上ならOKになります。
一般的な契約だと正当な理由が無い場合、ずっと貸さなくてはならないのですが、事業用定期借地権なら10年の期間が終了すれば正当な理由が無くても土地を返却してもらえるので無用なトラブルがありません。
また、事業用に限定している為、居住トラブルが無いのも特徴です。
事業用定期借地権のデメリット
事業用定期借地権は、次のようなデメリットがあります。
- 事業用に限られるので借り手が少ない
- 保証金が安い
- 相続時の評価額が高くなる
事業用定期借地権にしてしまうと、事業者が借りてくれない場合、借りる人がいないという事になります。
交通の便が良い道沿いの土地なら、事業用定期借地権でも問題なく借主がいるかもしれませんが、ちょっと道から離れた場所だとなかなか事業者の借り手が入ないという事が起こります。
また、一般的な借地契約に比べると保証金が安いうえに、相続時の評価は上がるので相続税は高くなってしまいます。
事業用定期借地権の相場
事業用定期借地権で土地を貸す場合、相場はいくら位になるのでしょうか?
まず、土地の更地価格を調べてみましょう。
貸し出す土地の更地価格が6千万円だったとします。
これに期待利回りをかけて、固定資産税などの税金を足したものが地代となります。
仮に期待利回りが2%だった場合、120万円の期待利回りになり、固定資産税が100万円なら、事業用定期借地権の金額は、年間220万円という事になります。
事業用定期借地権の場合、年間で一括支払いする事もあれば月々支払う事もある為、月額で地代を払うなら、月額18万3千円程の収入になるでしょう。
つまり、その土地の更地価格によって地代が異なりますが、道沿いとか、立地条件が良い場合は、地代が上がる事も多いです。
逆に田舎で利用価値が低い場所なら、地代を下げる事もあるので、場所によって相場が異なることもあるでしょう。
事業用定期借地権にした方が良いのか?
今、所有している土地を一般定期借地にするか、事業用定期借地権かで迷っている人もいるのではないでしょうか?
事業用定期借地権にした方が、メリットがあるのかどうか迷うなら以下のようなことを参考にして決めると良いでしょう。
土地を将来的にどうするかで決める
所有している土地を、将来的にどうするか決めてから事業用定期借地権を設定し貸しても良いのではないでしょうか?
一般定期借地にしてしまうと、50年後までその土地を貸すことになります。
50年後、自分が生きているかどうかも判らないので心配という人もいるのではないでしょうか?
自分が元気なうちに子供の為に家を建てたいとか、子供に土地を譲って家を建てて欲しいという希望があるなら、事業用定期借地権にした方が良いでしょう。
10年は、事業用定期借地権として貸すけど、その後、売るかもしれないという人もいらっしゃいます。
通常の借地契約では、地主が土地を売りたいと希望しても簡単に売る事はできません。
その点、事業用定期借地権なら10年後は問答無用で売却してもよいし、家を建てる事もできます。
少しでも所有の土地を活用すると思われるなら、事業用定期借地権が良いのです。
とりあえず事業用定期借地権という方法もある
今は、具体的に決めていないけど、将来的に土地を活用するかもしれないという人もいらっしゃいます。
このような人もとりあえず事業用定期借地権にしておくと良いでしょう。
通常の契約だと、途中でコロコロ契約内容を変える事はできません。
しかし、事業用定期借地権なら、10年という期限を過ぎればその時までに決めれば良いので十分時間はあります。
先々は判らないけど50年は待てないというならとりあえず事業用定期借地権という手段があるのです。
まとめ
定期借地の中でも事業用定期借地権を選ぶ地主さんが多いです。
ただし、事業用に限られますし、老人ホームや短期入所施設など居住する事業は契約できません。
事業者も限られるため場所によっては借り手がなかなか見つからないケースもあるのです。
ただし、事業が上手くいかなかった場合、借主も10年で契約を終了することができる為、地主にも借主にもメリットがあると言えます。
高齢化社会とはいえ、自分が生きている間に所有の土地をどうするか決めたいなら事業用定期借地権という選択肢があるのです。