あなたは相続不動産をうまく活用できていますか?
相続不動産は、うまく活用できていなくても、あなたが保有しているだけで毎年毎年、固定資産税が徴収されてしまいます。
また、不動産は、年を追うごとに資産価値が下がってしまいます。
活用方法がわからない?売却手続きが面倒だ?
あなたが住んでいる地域から離れた場所に相続不動産がある場合は、ぜひ売却を検討しましょう。
この記事では、相続不動産を売却するとき必要となる税金について、相続不動産を上手に売却する方法などについて解説します。
相続不動産を売却する流れ
相続不動産の売却は、あなたが相続してから3年以内に完了させるのが理想と言われています。
あなたが相続不動産の売却を考えたら、次の流れで手続きを進めることになります。
- 遺産分割協議をする
- 名義人を変更する
- 売買仲介業者に売却依頼する
- 相続不動産を売却する
- 確定申告して、税金を納める
それぞれの手続きについて、順を追って解説します。
できるだけ早く遺産分割協議しましょう
相続不動産を売却するには、まず相続不動産についての遺産分割協議書を作成する必要があります。
この遺産分割協議書は、複数の人で相続不動産を共有している場合、その全員が売却を同意していることを証明する書類となります。
相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明が必要になります。
たとえば、売却に同意しない人が1人でもいれば、相続不動産を売却することはできません。
もし、複数の人で相続したものでなく、あなただけで相続した不動産であれば、もちろん遺産分割協議書を作成する必要はありません。
遺産分割協議は、揉める場合も多いようです。
活用できないまま相続不動産を保有していても、資産価値は下がり続けるだけです。
スムーズに相続不動産を売却したいのであれば、できるだけ早く遺産分割協議を開始することをおすすめします。
相続不動産の名義を変更する
遺産分割協議が終わったら、相続不動産の名義を故人から相続人に変更します。
複数の人で相続する場合は、それぞれの人がどの不動産をどの割合で相続したかについて示されることになります。
相続不動産の名義変更が完了すると、相続した人がそれぞれの相続不動産を自由に活用することができます。
信用できる不動産売買仲介業者を見つけて売却依頼しましょう
あなたが相続不動産を売却する場合は、売買仲介業者を見つけましょう。
ネットで探すこともできますが、できるだけ相続不動産の地域に強い売買仲介業者を探すことをおすすめします。
売買仲介業者は必ず複数の候補を挙げて、売却価格の見積もりを依頼します。
見積額は、あくまで見積額なので、実際に売却できる金額とは異なる場合が多いです。
見積額が高くても、実際にその金額で相続不動産が売却できる保証はありません。
売却価格の妥当性、売買仲介業者と担当者の信頼性などをしっかり判断し、相続不動産の売却を依頼する売買仲介業者を選びましょう。
売却価格を工夫しながら相続不動産を売却しましょう
売買仲介業者に見積もってもらった売却価格から、相続不動産の売却活動を始めます。
すぐに買主が見つかるケースは多くなく、長期間売却の目処がつかない場合は、売却金額を下げるなどの工夫をします。
相続不動産を保有したままでは、固定資産税や維持費が積み重なるので、あなたの希望より低い金額であっても、売却することが得策の場合があります。
しっかり確定申告をして、税金を算出します
相続不動産を売却した場合、直後の確定申告が必要になります。
売買仲介業者や取引銀行から税務署に報告があるのか、不動産売却の事実を税務署は把握しています。
隠すことなく、しっかりと確定申告しましょう。
なお、税金関連の法律や仕組みは複雑です。不明点や疑問点については、仲介業者や税務署に相談することをおすすめします。
相続不動産を売却すると、相続税・所得税・住民税を納める必要があります
相続不動産を売却する場合には、さまざまな税金を納める必要があります。
ここでは、おさめる必要がある税金について解説します。
所得税と住民税
相続不動産を売却したときに生じた売却益に対しては、所得税と住民税を納める必要があります。
相続不動産を売却するときの売却益は、次のように計算します。
売却益(課税所得)=売却価格-売却費用-取得費
- 売却価格:相続不動産を売却した価格
- 売却費用:相続不動産売却にかかった仲介手数料などの費用
- 取得費:取得価格から、減価償却費に相当する金額を引いた金額
相続不動産の場合には、取得価格は故人が取得したときのものを用いて計算する必要があります。
しかし、取得価格が不明な場合や、取得価格が売却価格の5%よりも少ない場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算することになっています。
算出された売却益に対して、次のように計算して、所得税と住民税を計算します。
- 所有期間が5年以下の場合:売却益(課税所得)×39% (所得税30%、住民税9%)
- 所有期間が5年を超える場合:売却益(課税所得)×20% (所得税15%、住民税5%)
相続不動産の場合、所有期間はあなたが相続した日から売却した日までの期間ではなく、故人が不動産を取得した日から売却した日までの期間を指しています。
相続税は正味の遺産額と基礎控除額を抑えるのがポイントです
相続不動産に対しては、相続税が課せられます。
しかし、相続不動産だけで課税されるのではなく、相続人全員が相続するすべてのものを合計した「正味の遺産額」から、基礎控除額を差し引いたものに対して課税されます。
正味の遺産額
預金・現金・土地・建物などの財産から、借入金・未払金などの債務を引いたものが該当します。
なお、生命保険金・死亡退職金は、非課税限度額を超えた分について、正味の遺産額に加算されます。
生命保険・死亡退職金の非課税限度額
それぞれ500万円×法定相続人の数
基礎控除額
3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税率と控除額
- 課税価格1,000万円以下の場合、相続税率10%・控除なし
- 課税価格3,000万円以下の場合、相続税率15%・控除50万円
- 課税価格5,000万円以下の場合、相続税率20%・控除200万円
- 課税価格1億円以下の場合、相続税率30%・控除700万円
- 課税価格2億円以下の場合、相続税率40%・控除1,700万円
- 課税価格3億円以下の場合、相続税率45%・控除2,700万円
- 課税価格6億円以下の場合、相続税率50%・控除4,200万円
- 課税価格6億円超の場合、相続税率55%・控除7,200万円
相続税の申告は、原則として故人の死亡した翌日から10か月以内に行うことが求められます。
なお、相続不動産を売却した場合は、相続税に加えて所得税も課せられますが、相続税申告期限の翌日から3年以内に相続不動産を売却した場合、相続税の一定額を取得費に加算して、所得税を軽減させることができます。
相続不動産を上手に売却するには専門家を活用しましょう
相続不動産の売却には、手間がかかる手続きや、複雑な税金の仕組みを理解して進める必要があります。
上手にすすめるには、専門家を活用することをおすすめします。
遺産分割協議でもめそうな場合は弁護士へ、相続登記については司法書士へ、相続税については税理士へ、相続不動産の査定については不動産鑑定士など、さまざまな専門家と相談しながら手続きを進めることが大切です。
場合によっては、これらの専門家が協力しながら手続きを進めるケースもあります。
最近は、まとめて依頼すると、個々の専門家に個別に依頼するよりも格安のセット料金で対応してくれるプランも登場しています。
また、無料相談を実施している専門家も多くいますので、相続不動産の売却で悩むことがあれば、相談することをおすすめします。
まとめ
いかがでしょうか?
たしかに、相続不動産の売却は手間がかかり、難しい手続きをたくさんこなす必要があります。
でも、せっかく故人があなたに残してくれた財産ですから、あなたが活用できないのであれば、売却を検討してみてはいかがでしょうか。