宅地だけでなくもちろん農地にも固定資産税は課税されます。
そもそも農地について知っている人は少ないのではないでしょうか。
農地を持っていても所持対象区分以外の事は知らないという人が多いと思います。
農地の固定資産税は宅地の固定資産税よりも安いというのは確かですが、宅地にはどんな区分があってそれぞれで固定資産税の違いがどれくらいあるのか。
今回徹底解説していきます。
記事の目次
農地の固定資産税
農地は国土面積の少ない日本にとって重要な土地なので昔から多方面から優遇されており、その一つに固定資産税の安さがあります。
しかし、農地は需要が少なく他の土地に比べて市場価値が相当低いです。
なので、農地はもともと他の土地よりも優遇されていますが土地の価格が低い為、固定資産税も安くなります。
農地の市場価値が低い理由
食糧生産にかかせない農地には農地法というものがあり、所有者であっても自由に扱うことが出来ません。
優良な農地を保全していく為に、農地の売買た賃借には各市町村の農業委員会の許可が必要になります。
また、取引相手も農業者に限られます。
農地を農地以外の土地にする(農地転用)ことが前提であれば、農業者以外の人でも農地を購入できますが、農地転用にも農業委員会の許可が必要であり、その許可も優良な農地には降りません。
これらの理由から、農地はほとんど農業者が農業用にしか購入できない様になっています。
また、農地から得られる収益が宅地よりも少ないことが市場価値の低い理由です。
農地の評価区分
農地の評価区分には農地評価と宅地並み評価があります。
まずはこの2つの違いと評価区分について説明していきます。
農地評価とは
一般農地と生産緑地に適用される農地評価を順に説明していきます。
農地評価①
まず最初に比較的多数ある田または畑から標準田、または標準畑を選びます。
標準田畑といいます。
農地評価②
農地の売買実例に基づいた価格を標準田畑に適用して標準田畑の価格を求めます。
しかし売買実例の価格がその通り使われるとは限らないです。
農地評価③
耕作目的の売買は、農地法第3条による許可を前提に行われ、その絶対数が少ないことから、宅地の見込みがあるなど他の要素を含んだ売買実例も参考にします。
その際、耕作目的を前提にした正常売買価格まで補正されます。
農地評価④
さらに限界収益修正率と呼ばれる0.55%を乗ずることで、標準田畑の価格は正常売買価格の55%になります。
※限界収益修正率とは・・・農地は広いほど生産性、収益が高くなります。そのため、耕作目的での売買でも農地で平均的に得られる収益額に比べ、それより大きな収益額を見込んで売買されています。
しかしそれでは不適当ということで、正常な価格に戻す為に使われるのが限界収益補修率の0.55%になります。
標準田畑の価格は販売実例を参考にしていますが、正常売買価格への修正と限界収益修正率によって、販売実例価格よりも安くなります。
宅地並み評価とは
一般市街化区域農地と特定市街化区域農地、転用が許可された農地や転用が確実な農地は、類似した宅地に比準して宅地並みに評価されます。
市街化区域とは、都市計画法第7条2項によると「既に市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」なので、生産緑地に指定されている場合を除いていずれ宅地になる農地になります。
そのため、評価も宅地扱いとなり土地の取引価格も農地に比べたかくなります。
農地を宅地するのには少なからず盛土などの工事が必要になります。
固定資産税額を求める際にもはその工事費用(造成費)を控除して計算されます。これが宅地並み評価の理由です。
普通、田よりも畑のほうが宅地にする際の盛土が多く必要で費用(造成費)も高額になります。
そのため、田と畑では田の方が固定資産税が安くなります。
農地課税と宅地並み課税
次に農地課税と宅地並み課税について詳しく解説していきます。
農地課税とは
一般農地と生産緑地には農地課税が課せられます。農地は税率が低いと思われがちですが、税率が低いのではなく農地専用の負担調整措置を適用しています。
負担調整措置とは、急激な税額の上昇を防ぐ為に前年度の課税標準税額と今年度の課税標準額の割合を求め、その割合から今年度の課税標準額を決めます。
負担調整措置があることで、固定資産税が急に上昇しても実際には急に納税額が上がることはなく、毎年徐々に上がっていくことになります。
負担水準=前年度課税標準額÷今年度課税標準額×100%
この計算で求められた負担水準で今年度の課税標準額が決められます。
負担水準は次の表の通りになります。
負担水準の値 | 今年度の課税標準額 | 補足 |
負担水準≧90% | 前年度課税標準額×1.025 | 上限:本則課税標準額 |
80%≦負担水準<90% | 前年度課税標準額×1.05 | - |
70%≦負担水準<80% | 前年度課税標準額×1.075 | - |
負担水準<70% | 前年度課税標準額×1.1 | - |
農地課税での負担調整措置の特徴は、下限の設定が低いことで負担水準が低くても前年度課税標準額の1.1倍までしか今年度課税標準額が増えないことです。
宅地並み課税とは
特定市街化区域農地の宅地並み課税は、農地でありながら宅地用の負担調整措置を適用します。
一般市街化区域と同じ宅地並み評価でさらに、課税水準を1/3にする特例もあります。
さらに、新しく特定市へ指定されると今までの一般市街化区域農地の農地に準じた課税から宅地並み課税へ変更されます。そうすると税負担が増す為に、4年度に渡り税負担を軽減する措置が適用されます。
合併により特定市となった場合は、合併特例法第16条第3項の規定により、合併後翌年度から5年度後までは合併前の課税となり、それ以降から特定市街化区域農地の課税になります。
負担調整措置は次の表の通りになります。
負担水準の値 | 今年度の課税標準額 | 補足 |
負担水準≧100% | 本則課税標準額 | 今年度が前年度以下のケース |
負担水準<100% | 前年度課税標準額+本則課税標準額×5% | 上限:本則課税標準額
下限:本則課税標準額×20% |
課税標準の特例は農地として利用されている農地にのみを対象としています。
農地の区分ごとでの比較
一般農地、市街化区域農地、特定市街化区域農地での違いを分かりやすくまとめました。
一般農地 | 一般市街化区域農地 | 特定市街化区域農地 | |
評価額 | 農地評価で安い | 宅地並み評価で高い | 宅地並み評価で高い |
評価方法 | 標準田畑の価格(正常売買価格×0.05)に比準 | 類似宅地価格に比準した価格から造成費を控除 | 類似宅地価格に比準した価格から造成費を控除 |
本則課税標準額 | 評価額 | 評価額×特例率 | 評価額×特例率×軽減率 |
負担調整措置 | 農地用で上昇が緩やか | 農地用で上昇が緩やか | 宅地用で上昇が早い |
税額 | 安い | 高め | 高い |
一般市街化区域農地は、特例と農地用の負担調整措置によって税額はそれほど高くならないですが、特定市街化区域農地は三大都市圏であることから、価格の高い宅地に比準するため税額も高くなります。
農地の固定資産税問題
農地の固定資産税は安いと思われがちですが、その制度に問題があり市街化区域農地では、税負担に苦しんでいるケースもあります。
宅地と市街化区域農地の課税標準特例
課税標準の特例は、一定面積の固定資産税が最大1/6、都市計画税は最大1/3に軽減されます。
特例の対象 | 名称 | 固定資産税 | 都市計画税 |
戸数×200㎡までの部分 | 小規模住宅用地 | 1/6に減額 | 1/3に軽減 |
戸数×200㎡を超える部分 | 一般住宅用地 | 1/3に軽減 | 2/3に軽減 |
市街化区域農地と小規模住宅用地を比べると、小規模住宅用地の方が2倍軽減されています。
負担調整措置があってもそれは、税額の急上昇を抑えるための制度なので、市街化区域農地よりも小規模住宅用地の方が税額が安くなることがあります。
まとめ
一言で農地といっても区分があって、それぞれ評価方法と税方法が違いそれにより固定資産税が大きく変わることが理解していただけましたでしょうか。
確かに農地は同じ地域の宅地と比べて安いですが、農業以外には使用できない、宅地にするには造成費がかかるなどを考えれば安い理由も分かりますよね。
また地域が都市計画区域に入っているかでも税額は大きく変わってきます。
境界線付近に農地を持っている方は今後の区域見直しで税額が大きく変わる可能性があるでしょう。